2019年1月12日土曜日

てのひらの えんぎもの

郷土玩具コレクターで、イラストレーターの佐々木一澄さんの個展
「てのひらの えんぎもの 日本の郷土玩具」原画展が
青山のOPAギャラリーで2019年1月11日から30日まで開催中です。



佐々木さんは昨年12月に「てのひらの えんぎもの 日本の郷土玩具」という
ご本を出版され、この個展は原画展となっています。
この本では日本全国の郷土玩具の歴史やその魅力を、絵と文章で紹介しています。




実は、佐々木さんが郷土玩具にご興味を持ったきっかけは備後屋を訪れたことでした。
その時のエピソードが、巻頭の”はじめに”に書かれていますので、
ご本人の承諾を得て、ここで紹介させていただきますね。


はじめに

この本は日本各地の郷土玩具、縁起物、お守りなどを絵と文で紹介する一冊です。
しかし、この本に日本の郷土玩具のすべてが描かれているわけではありません。
僕自身が集めてきたもの、そして現在も作られているものを描きました。
それゆえ、趣味に偏りがあるかもしれませんが、それぞれに思い出があり、
愛着のあるものばかりです。
デフォルメも省略もせずに、ありのままの魅力が抽出されるように、僕自身のフィルターは限りなく薄くして描いたつもりです。

僕と郷土玩具との出会いは二〇〇八年十一月のことです。
僕の絵は影のない色面と少しの線で構成されているものが多いので、近しい表現の琳派や家紋、型染などの造形に興味があり、民藝店ならそういうものも見ることができるかなと思い、新宿の「備後屋」を訪れました。
備後屋には日本全国から集められた民藝品が所狭しと並び、どれもあたたかく、健やかで、自分の琴線に触れるものばかりでした。
出西窯の丸紋土瓶や小鹿田焼の飛鉋。青森のりんごカゴや倉敷の椅子敷。
そしてところどころに型染作家である柚木沙弥郎さんの型染めが展示されていて、こう言った大胆で柔らかな空気をまとった絵を描きたいなあなんてことをぼんやりと思いながら店内を見ていました。
そのうちふと、地下にも何かが展示されていることに気付き、足を踏み入れてみると、
その瞬間スイッチが押されたように、自分のなかで何かが弾ける音が聞こえました。
「これはすごい.......」
そこには素朴で無邪気で色鮮やかで少し間抜けな人形がたくさん並んでいました。
郷土玩具です。
こけしやだるまや犬張子などが、自分の頭のなかにあった寂しく暗く古びたイメージとはまったく違い、みずみずしい魅力に溢れています。
なんてのびのびしているんだろう。
一生付き合っていくことになるかもしれない.......。
それが僕と郷土玩具との出会いでした。

「え?これも?」
「こんなものがあるの?」
「そんな歴史があるのか......」
郷土玩具のすべてが新鮮に見え、知れば知るほど魅力に満ちた郷土玩具がたくさん作られていることに驚きをおぼえるのです。

この本を手にしてくださったみなさんも、僕と同じように、郷土玩具の魅力を新鮮に感じていただけることと思います。
そして旅先で、故郷で、少しでも郷土玩具のことを思っていただけたら、これに勝る喜びはありません。


私は、この佐々木さんの備後屋でのエピソードを数年前に読み、
涙が溢れてきたのを覚えています。
郷土玩具売場に配属されて間もない頃は、私にとっては子供の頃から郷土玩具はいつも身の回りにあり、見慣れていたものでしたので、
親近感はあっても、感動を与えてくれる対象ではなかったのでした。
はっきり言うと、郷土玩具にあまり興味を持てなかったのでした。
しかし、毎日毎日郷土玩具たちと1日の大半を共に過ごし、その歴史や作られた意味や作り手さん達のことを知るうちに、佐々木さんと同じように郷土玩具たちが愛おしくてしょうがなく感じるようになりました。そして、その歴史や意味をお客様にお話をして、それをわかってもらった上で、この”かわいい子たち”を大切にしてくれるお客様に買って頂きたいと思うようになりました。


この本は、郷土玩具の入門書として最高だと思います。
一つ一つの説明がとてもわかりやすく、面白いです。
それに何より、イラストがとても素敵!

福岡県筑後市 赤坂人形
ちょうど昨年末、沢山入ってきたので、比べてみてください。



熊本県人吉のきじ馬と花手箱
こちらも久々に色々なサイズが入荷しました!


私にはまだ佐々木さんほどの知識や、実際にお会いした作り手さんも少ないので、
おこがましいのですが、
佐々木さんはイラストと文章で、私はお客様と直接お話したりSNSで。
ご紹介の仕方は違いますが、郷土玩具の素晴らしさを伝えたいという気持ちは同じです。

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